- 言語知識(文字・語彙・文法)・読解110分
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文字・語彙
問題1 漢字読み
__の言葉の読み方として最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
1現場の状況を正確に把握するのは、思ったより難しい。
- 1はやく
- 2はあく
- 3はあつ
- 4はにぎ
答えと解説
答え: 2 はあく
「把握」は「はあく」と読みます。しっかり理解する、という意味です。「握」を訓読みの「にぎ」で読んだり、「あつ」と読んだりしないように注意しましょう。
2この地域では、高齢者向け住宅の需要が年々高まっている。
- 1じゅうよう
- 2しゅよう
- 3じゅうよ
- 4じゅよう
答えと解説
答え: 4 じゅよう
「需要」は「じゅよう」と読みます。「需」は短い「じゅ」で、「重要(じゅうよう)」と混同しないようにしましょう。
3彼は長年の苦手意識を克服し、人前で堂々と話せるようになった。
- 1こくふく
- 2こくぶく
- 3かつふく
- 4こっぷく
答えと解説
答え: 1 こくふく
「克服」は「こくふく」と読みます。困難に打ち勝つという意味です。「服」は濁らず、「こく」も促音になりません。
4市は住民に節水を促すポスターを駅に貼った。
- 1もよおす
- 2そそのかす
- 3うながす
- 4ほどこす
答えと解説
答え: 3 うながす
「促す」は「うながす」と読み、何かをするように勧めるという意味です。「もよおす」は「催す」、「そそのかす」は「唆す」、「ほどこす」は「施す」です。
5その職人は巧みな手つきで、細い竹を次々に編んでいった。
- 1たくみ
- 2たくらみ
- 3こうみ
- 4いとなみ
答えと解説
答え: 1 たくみ
「巧み」は「たくみ」と読み、技術がすぐれていて上手なことです。「たくらみ」は「企み」、「いとなみ」は「営み」です。
6久しぶりの同窓会は、終始和やかな雰囲気で進んだ。
- 1おだやか
- 2にぎやか
- 3なだらか
- 4なごやか
答えと解説
答え: 4 なごやか
「和やか」は「なごやか」と読み、打ち解けて穏やかな様子を表します。「おだやか」は「穏やか」、「にぎやか」は「賑やか」と書きます。
問題2 文脈規定
( )に入れるのに最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
7駅前の道路の補修工事は、来月中旬に終わる( )だ。
- 1気配
- 2心当たり
- 3見込み
- 4手配
答えと解説
答え: 3 見込み
「〜見込みだ」は、たぶんそうなるだろうという予想を表します。「気配」は様子から感じられるもの、「心当たり」は思い当たること、「手配」は準備することで、ここには合いません。
8今月の販売( )を達成するため、営業部では毎日遅くまで会議が続いている。
- 1ノウハウ
- 2ノルマ
- 3キャリア
- 4ブランク
答えと解説
答え: 2 ノルマ
「ノルマ」は、決められた仕事の量や目標のことで、「ノルマを達成する」と言います。「ノウハウ」はやり方の知識、「キャリア」は経歴、「ブランク」は空白の期間です。
9図書館の静かな席に移ったら、レポートの作成が思いのほか( )。
- 1さかえた
- 2みのった
- 3うるおった
- 4はかどった
答えと解説
答え: 4 はかどった
「はかどる」は、仕事や作業が順調に進むという意味です。「さかえる」は町や商売が栄える、「みのる」は実がなる・努力が実る、「うるおう」は湿り気や豊かさを得るという意味で、作業には使いません。
10この二つの薬は名前が( )ので、取り違えないよう棚を分けて置いている。
- 1紛らわしい
- 2煩わしい
- 3慌ただしい
- 4痛ましい
答えと解説
答え: 1 紛らわしい
「紛らわしい」は、よく似ていて区別しにくいという意味です。取り違えないように棚を分けている理由として合います。「煩わしい」は面倒だ、「慌ただしい」は忙しく落ち着かない、「痛ましい」はかわいそうで見ていられないという意味です。
11新しく来たアルバイトの田中さんは、指示された仕事を( )と片づけていく。
- 1うっとり
- 2てきぱき
- 3しみじみ
- 4ひやひや
答えと解説
答え: 2 てきぱき
「てきぱき」は、仕事などを手際よく素早く進める様子です。「うっとり」は美しさに心を奪われる様子、「しみじみ」は深く感じる様子、「ひやひや」は心配でどきどきする様子で、仕事を片づける様子には合いません。
12夜遅くに大きな音で音楽を流すのは、近所への( )に欠ける行為だ。
- 1用心
- 2警戒
- 3配慮
- 4世話
答えと解説
答え: 3 配慮
「配慮」は、相手のことを考えて気を配ることで、「〜への配慮に欠ける」はよく使う言い方です。「用心」「警戒」は危険に備えること、「世話」は人の面倒を見ることで、文に合いません。
13議論が平行線のままだったので、議長は話し合いを途中で( )。
- 1打ち切った
- 2切り替えた
- 3取り消した
- 4差し引いた
答えと解説
答え: 1 打ち切った
「打ち切る」は、続いていることを途中でやめるという意味です。「切り替える」は別のものに変える、「取り消す」は決めたことをなかったことにする、「差し引く」はある数を引くという意味です。
問題3 言い換え類義
__の言葉に意味が最も近いものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
14会議で配る資料は、極力少なくしてください。
- 1必ず
- 2少しずつ
- 3ただちに
- 4できる限り
答えと解説
答え: 4 できる限り
「極力」は「できる限り」「なるべく」という意味です。「必ず」は例外なく、「ただちに」はすぐに、という意味で、意味が違います。
15試験に落ちたと知って、弟はひどく落胆した。
- 1あわてた
- 2がっかりした
- 3腹を立てた
- 4ほっとした
答えと解説
答え: 2 がっかりした
「落胆する」は、期待どおりにならずにがっかりすることです。「あわてる」は急いで落ち着かない、「腹を立てる」は怒る、「ほっとする」は安心するという意味です。
16その小説は、ありふれた家族の日常を丁寧に描いている。
- 1裕福な
- 2変わった
- 3平凡な
- 4仲のいい
答えと解説
答え: 3 平凡な
「ありふれた」は、どこにでもあって珍しくないという意味で、「平凡な」が近いです。「変わった」は反対の意味です。
17客からのクレームには、担当者がすぐに対応することになっている。
- 1苦情
- 2注文
- 3予約
- 4感想
答えと解説
答え: 1 苦情
日本語の「クレーム」は、不満を伝える「苦情」の意味で使われます。「注文」「予約」「感想」は意味が違います。
18寒い雨の日は、出かけるのがおっくうだ。
- 1楽しみだ
- 2危険だ
- 3不安だ
- 4面倒だ
答えと解説
答え: 4 面倒だ
「おっくうだ」は、気が進まず面倒に感じるという意味です。「危険だ」「不安だ」は気持ちの理由が違い、「楽しみだ」は反対の気持ちです。
19研究チームは、問題を解く手がかりをようやくつかんだ。
- 1自信
- 2ヒント
- 3答え
- 4時間
答えと解説
答え: 2 ヒント
「手がかり」は、問題を解決するきっかけになるもの、つまり「ヒント」のことです。「答え」はすでに解決したものなので、意味が違います。
問題4 用法
次の言葉の使い方として最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
20配布
- 1この道路は、毎朝たくさんの荷物を配布するトラックが通る。
- 2警備員は、会場の入り口ごとに二人ずつ配布された。
- 3会議の前に、資料を出席者全員に配布しておいた。
- 4この会社の利益の一部は、毎年株主に配布されている。
答えと解説
答え: 3 会議の前に、資料を出席者全員に配布しておいた。
「配布」は、資料やチラシなどを多くの人に配ることです。1は「配送」、2は「配置」、4は「配当」や「分配」が自然です。
21満喫
- 1久しぶりの休暇で、温泉と地元の料理を満喫した。
- 2荷物を詰め込みすぎて、かばんが満喫になった。
- 3会場の席はすべて埋まり、満喫の状態だった。
- 4全員が賛成し、計画は満喫で可決された。
答えと解説
答え: 1 久しぶりの休暇で、温泉と地元の料理を満喫した。
「満喫」は、十分に味わって楽しむことです。2は「満杯」、3は「満員」、4は「満場一致」が正しい言い方です。
22見落とす
- 1試合には負けたが、彼は最後まで希望を見落とさなかった。
- 2留学する親友を、空港まで見落としに行った。
- 3展望台から、長年住んだ町を見落とした。
- 4確認が不十分で、書類の重要な誤りを見落としていた。
答えと解説
答え: 4 確認が不十分で、書類の重要な誤りを見落としていた。
「見落とす」は、見ていたのに気づかずに過ごしてしまうことです。1は「失わ(なかった)」、2は「見送り」、3は「見下ろした」や「見渡した」が自然です。
23円満
- 1資金が円満にあるので、新しい事業を始められる。
- 2長く続いた両社の対立は、話し合いによって円満に解決した。
- 3このパソコンは機能が円満で、仕事に必要なことは何でもできる。
- 4十五夜には、円満な月が夜空に浮かぶ。
答えと解説
答え: 2 長く続いた両社の対立は、話し合いによって円満に解決した。
「円満」は、争いがなく穏やかにまとまっている様子で、「円満に解決する」「円満な家庭」のように使います。1は「十分に」、3は「充実していて」、4は「まん丸な」が自然です。
24めきめき
- 1冷たい風に吹かれて、体がめきめき震えた。
- 2失敗が続いて、彼はめきめき元気をなくしていった。
- 3毎日練習を続けた結果、彼女のピアノの腕はめきめき上達した。
- 4大事な発表の前で、心臓がめきめきしている。
答えと解説
答え: 3 毎日練習を続けた結果、彼女のピアノの腕はめきめき上達した。
「めきめき」は、技術や力などが目に見えてよくなる様子です。1は「ぶるぶる」、2は「みるみる」、4は「どきどき」が自然です。
25人手
- 1この店は、週末になると人手が足りなくなる。
- 2祭りの日は、駅前が大勢の人手でにぎわった。
- 3新しい部長は人手がよく、部下からの信頼も厚い。
- 4彼は人手が広く、どの業界にも知り合いがいる。
答えと解説
答え: 1 この店は、週末になると人手が足りなくなる。
「人手」は、仕事をする人の数(働き手)のことで、「人手が足りない」のように使います。2は同じ読みの「人出」、3は「人柄」、4は「顔」が正しい言い方です。
文法
問題5 文法形式の判断
次の文の( )に入れるのに最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
26年に一度の花火大会( )、駅前は朝から大勢の見物客でにぎわっていた。
- 1とあれば
- 2とあって
- 3にもかかわらず
- 4にしては
答えと解説
答え: 2 とあって
「NとあってA」は「Nという特別な状況なので、当然Aだ」という意味です。年に一度の花火大会だから混んでいた、という流れに合います。「とあれば」は仮定の条件で、過去の事実には使えません。「にもかかわらず」「にしては」は予想と違う結果を表すので合いません。
27駅前に大型スーパーができて( )、商店街を訪れる客は目に見えて減ってしまった。
- 1からといって
- 2からには
- 3からでないと
- 4からというもの
答えと解説
答え: 4 からというもの
「Vてからというもの」は「あることをきっかけに、その後ずっと状態が変わった」という意味です。スーパーができた後、客が減り続けたという内容に合います。「からといって」「からには」はて形には付かず、「てからでないと」は「〜した後でなければ」という条件で意味が合いません。
28この劇団は、来月の東京公演( )、全国十都市を回る予定だ。
- 1を皮切りに
- 2をもとに
- 3を限りに
- 4をよそに
答えと解説
答え: 1 を皮切りに
「Nを皮切りに」は「Nを最初として、次々に同じことが続く」という意味です。東京公演から始めて全国を回る、という内容に合います。「をもとに」は材料・根拠、「を限りに」は「それを最後に」、「をよそに」は「〜を気にしないで」という意味です。
29この旅館では、地元の漁師から直接仕入れた、港町( )新鮮な魚料理が味わえる。
- 1らしからぬ
- 2ばかりの
- 3ならではの
- 4ながらの
答えと解説
答え: 3 ならではの
「Nならではの」は「Nだからこそできる、Nにしかない」という意味で、よい特徴をほめるときに使います。港町だからこその新鮮な魚料理、という意味になります。「らしからぬ」は「〜らしくない」で意味が反対です。「ばかりの」は意味が通らず、「ながらの」は「昔ながらの」など決まった形でしか使いません。
30春になった( )、朝晩はまだ冷え込むので、上着は手放せない。
- 1とあって
- 2からには
- 3とはいえ
- 4ばかりに
答えと解説
答え: 3 とはいえ
「AとはいえB」は「Aは事実だが、それでもB」という逆接です。春になったが、まだ寒い、という内容に合います。「とあって」「からには」は理由・前提を表し、「ばかりに」は「それが原因で悪い結果になった」という意味なので、後の文とつながりません。
31この程度の軽いけがなら、わざわざ病院に行く( )。薬を塗っておけば治るだろう。
- 1までもない
- 2わけにはいかない
- 3にかたくない
- 4ほかない
答えと解説
答え: 1 までもない
「V辞書形+までもない」は「わざわざ〜する必要はない」という意味です。軽いけがだから病院に行く必要はない、という内容に合います。「わけにはいかない」は事情があってできない、「にかたくない」は「想像にかたくない」のように使い、「ほかない」は「それしか方法がない」で後の文と合いません。
32彼は優秀だが、何でも一人で抱え込んでしまう( )。もう少し周りを頼ってもいいと思う。
- 1どころではない
- 2にすぎない
- 3までだ
- 4きらいがある
答えと解説
答え: 4 きらいがある
「V辞書形+きらいがある」は「〜するというよくない傾向がある」という意味です。何でも一人で抱え込む、というよくない癖を表すので合います。「どころではない」は「〜する余裕がない」、「にすぎない」は「ただ〜だけだ」、「までだ」は「〜するだけだ」という意味で、文に合いません。
33A「昨日の会議、どうして来なかったの? 連絡もなかったし。」
B「ごめん。電車の中でスマホの電池が切れちゃって、連絡( )できなかったんだ。」
- 1しようものなら
- 2しようにも
- 3するまでもなく
- 4したところで
答えと解説
答え: 2 しようにも
「V意向形+にも+Vない」は「〜しようと思っても、できない」という意味です。電池が切れて、連絡したくてもできなかった、という内容に合います。「しようものなら」は「もし〜したら大変なことになる」、「するまでもなく」は「〜する必要もなく」、「したところで」は「〜しても無駄だ」という意味です。
34大雪の影響で、予定していた屋外イベントは中止を( )。
- 1余儀なくされた
- 2余儀なくさせた
- 3禁じ得なかった
- 4いとわなかった
答えと解説
答え: 1 余儀なくされた
「Nを余儀なくされる」は「しかたなくNをしなければならなくなる」という意味です。主語がイベントなので、受け身の「余儀なくされた」が正しいです。「余儀なくさせた」は原因が主語のときの形です。「禁じ得ない」は「同情を禁じ得ない」のように気持ちに使い、「いとわない」は「〜を嫌がらない」という意味です。
35(取引先との電話で)
A「では、来週の火曜日の午後二時はいかがでしょうか。」
B「はい、大丈夫です。それでは火曜日の二時に( )のを楽しみにしております。」
- 1お会いになる
- 2ご覧になる
- 3お目にかかれる
- 4お目にかける
答えと解説
答え: 3 お目にかかれる
「お目にかかる」は「会う」の謙譲語で、自分が相手に会うことを低めて言います。可能形の「お目にかかれる」で「会えるのを楽しみにしている」という意味になります。「お会いになる」は尊敬語なので自分の動作には使いません。「ご覧になる」は「見る」の尊敬語、「お目にかける」は「見せる」の謙譲語です。
問題6 文の組み立て
次の文の★に入る最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
36毎日忙しくて、休日に本を読む時間は、とれても __ __ _★_ __ 。
- 1ところだ
- 2一時間
- 3せいぜい
- 4といった
答えと解説
答え: 4 といった
正しい順番は 3→2→4→1 です。「〜といったところだ」は「多くても〜ぐらいだ」という意味で、「せいぜい」とよくいっしょに使います。完成した文は「毎日忙しくて、休日に本を読む時間は、とれてもせいぜい一時間といったところだ。」です。
37今回の調査は、地元の方々の __ __ _★_ __ だろう。
- 1なしには
- 2とても
- 3協力
- 4進められなかった
答えと解説
答え: 2 とても
正しい順番は 3→1→2→4 です。「Nなしには〜ない」は「Nがなければ〜できない」という意味です。「とても〜ない」は「どうしても〜ない」を表します。完成した文は「今回の調査は、地元の方々の協力なしにはとても進められなかっただろう。」です。
38駅から少し遠いが、新しく借りた部屋は __ __ _★_ __ 、とても気に入っている。
- 1よく
- 2狭い
- 3日当たりが
- 4ながらも
答えと解説
答え: 3 日当たりが
正しい順番は 2→4→3→1 です。「いA+ながらも」は「〜けれども」という逆接です。狭いけれども日当たりがいい、という意味になります。完成した文は「駅から少し遠いが、新しく借りた部屋は狭いながらも日当たりがよく、とても気に入っている。」です。
39佐藤さんは、__ __ _★_ __ 、子ども向けの絵本を書き続けている。
- 1かたわら
- 2週末を利用して
- 3働く
- 4会社員として
答えと解説
答え: 1 かたわら
正しい順番は 4→3→1→2 です。「V辞書形+かたわら」は「本業をしながら、その一方で別の活動もする」という意味です。完成した文は「佐藤さんは、会社員として働くかたわら、週末を利用して、子ども向けの絵本を書き続けている。」です。
40この旅館では、部屋の家具 __ __ _★_ __ 地元の職人が作ったものを使っている。
- 1すべて
- 2から
- 3料理の器
- 4に至るまで
答えと解説
答え: 4 に至るまで
正しい順番は 2→3→4→1 です。「AからBに至るまで」は「AからBまで、範囲の全部」という意味で、Bにはふつう意外なものや範囲の端を置きます。完成した文は「この旅館では、部屋の家具から料理の器に至るまですべて地元の職人が作ったものを使っている。」です。
問題7 文章の文法
次の文章を読んで、文章全体の内容を考えて、【番号】の中に入る最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
先日、学生時代の友人から一通の手紙が届いた。封筒の表には、見覚えのある少し右上がりの字で私の名前が書かれていた。メールやメッセージアプリで用件を伝えるのが当たり前になった今、手書きの手紙を受け取るのは何年ぶりだろうか。
便箋を開くと、近況が三枚にわたってつづられていた。読み進めるうちに、ところどころに書き直した跡があることに気づいた。言葉を選び、消しては書き直す。1跡を見ていると、友人が机に向かって私のことを考えていた時間が伝わってくるようだった。
私はこれまで、手紙は時間がかかるだけの古い方法だと考えていた。用件を伝えるだけなら、メールのほうがずっと速くて確実だ。2、この一通の手紙を読み終えたとき、私の心に残ったのは、書かれていた内容よりも、それを書くために友人が費やしてくれた時間のほうだった。
考えてみれば、手紙を書くという行為は、相手のために自分の時間を差し出すこと3。字の形や書き直しの跡には、その時間が目に見える形で残っている。だからこそ、受け取った側はそこに特別な温かさを感じるのだろう。
もちろん、メールが冷たい4。すぐに返事ができることで救われる場面も多い。ただ、便利さを手に入れる一方で、私たちは相手のために時間をかけるという経験を、知らず知らずのうちに少しずつ手放している5。今度の休みには、久しぶりに便箋を買って、友人に返事を書いてみようと思う。
411
- 1あのような
- 2そうした
- 3いかなる
- 4そうして
答えと解説
答え: 2 そうした
直前の「言葉を選び、消しては書き直す」を指して「そのような跡」と言っているので、「そうした」が正しいです。「あのような」は話し手と読み手が共に知っているものを指すときに使い、ここでは合いません。「いかなる」は疑問・不定、「そうして」は名詞の前に置けません。
422
- 1ところが
- 2そのうえ
- 3したがって
- 4つまり
答えと解説
答え: 1 ところが
前の段落では「メールのほうが速くて確実だ」と考えていたのに、後では「心に残ったのは友人が費やした時間だった」と、予想と違うことを述べています。そのため逆接の「ところが」が入ります。「そのうえ」は追加、「したがって」は結果、「つまり」は言い換えです。
433
- 1にすぎない
- 2とはかぎらない
- 3どころではない
- 4にほかならない
答えと解説
答え: 4 にほかならない
「AはBにほかならない」は「AはまさにBだ」と強く断定する表現です。手紙を書くことは、相手のために時間を差し出すことそのものだ、という意味で、次の「だからこそ…温かさを感じる」につながります。「にすぎない」は価値を低く見る言い方、「とはかぎらない」は否定的で、後の文と合いません。
444
- 1わけだ
- 2からだ
- 3わけではない
- 4にちがいない
答えと解説
答え: 3 わけではない
「もちろん」で始まり、次に「すぐに返事ができることで救われる場面も多い」とメールのよさを述べているので、「メールが冷たいということではない」と部分的に否定する「わけではない」が入ります。「わけだ」「にちがいない」は「メールは冷たい」と認めることになり、後の文と合いません。
455
- 1わけがないだろう
- 2のではないだろうか
- 3ものだろうか
- 4ことになるまい
答えと解説
答え: 2 のではないだろうか
筆者は、私たちが相手のために時間をかける経験を手放しているのではないかと、控えめに問題を投げかけています。「のではないだろうか」は自分の考えをやわらかく述べる言い方で、文章の流れに合います。「わけがないだろう」「ものだろうか」は「そんなことはない」という否定になり、筆者の考えと反対です。
読解
問題8 内容理解(短文)
次の文章を読んで、後の問いに対する答えとして最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
説明を聞いて「なるほど」と思った瞬間、人はそれを理解したと感じる。しかし、その感覚はあまりあてにならない。試しに、聞いたばかりの内容を自分の言葉で誰かに説明してみるとよい。途中で言葉に詰まり、肝心な部分が頭の中でつながっていなかったことに気づくはずだ。わかったという感覚は、話の筋を追えたというだけのことであって、自分で組み立て直せることとは別物なのである。本当に理解しているかどうかは、うなずいた後の、この不格好な作業の中でしか確かめられない。
46筆者の考えに合うものはどれか。
- 1説明を聞いて納得できれば、内容はおおむね理解できている。
- 2人に説明するときは、言葉に詰まらないよう準備しておくべきだ。
- 3理解できたかどうかは、自分で説明し直してみて初めてわかる。
- 4話の筋を追えないうちは、他人に説明しようとしてはいけない。
答えと解説
答え: 3 理解できたかどうかは、自分で説明し直してみて初めてわかる。
最後の文に「本当に理解しているかどうかは、うなずいた後の、この不格好な作業の中でしか確かめられない」とあり、「この作業」は自分の言葉で説明してみることです。1は「その感覚はあまりあてにならない」と反対です。2と4は本文に書かれていません。
件名:ご注文品の納期についてのお願い
山川商事株式会社
購買部 佐藤様
いつもお世話になっております。森田製作所の田中です。
ご注文いただきました部品につきまして、10月15日にお届けする予定でおりましたが、材料の入荷の遅れにより、予定どおりのお届けが難しくなりました。誠に申し訳ございません。
つきましては、納期を10月22日に変更させていただけないでしょうか。なお、一部を先にお届けすることは可能ですので、お急ぎの分がございましたらお知らせください。
何とぞよろしくお願い申し上げます。
47このメールで最も伝えたいことは何か。
- 1部品を届ける日を一週間遅らせることを認めてほしい。
- 2材料の入荷が遅れている事情を理解してほしい。
- 3急いで必要な部品の数を早く知らせてほしい。
- 4注文した部品の一部を先に受け取ってほしい。
答えと解説
答え: 1 部品を届ける日を一週間遅らせることを認めてほしい。
「つきましては、納期を10月22日に変更させていただけないでしょうか」が中心のお願いです。15日から22日へ一週間遅らせたいということです。2は遅れの理由の説明、3と4は「なお」以下の補足で、最も伝えたいことではありません。
秋に花を咲かせる植物の多くは、気温ではなく夜の長さによって季節を知るといわれる。気温は年によって大きく変わるが、夜の長さは毎年同じように移り変わるため、季節を知る手がかりとしてはるかに確かだからだ。こうした植物は、夜が一定の長さを超えると、花を咲かせる準備を始める。興味深いのは、長い夜の途中で短い時間だけ光を当てると、花が咲かなくなることである。植物が測っているのは、昼の長さそのものではなく、暗い時間がどれだけ途切れずに続くかなのだ。
48本文の内容に合うものはどれか。
- 1秋に咲く植物は、気温が下がり始めると花を咲かせる準備をする。
- 2夜の長さは年によって変わるので、植物は昼の長さも手がかりにしている。
- 3夜の間ずっと光を当て続けると、花が早く咲くようになる。
- 4夜が長くても、暗い時間が光で途切れると花が咲かないことがある。
答えと解説
答え: 4 夜が長くても、暗い時間が光で途切れると花が咲かないことがある。
「長い夜の途中で短い時間だけ光を当てると、花が咲かなくなる」「暗い時間がどれだけ途切れずに続くか」を測っている、とあるので4が合います。1は「気温ではなく夜の長さ」と反対、2は「夜の長さは毎年同じように移り変わる」と反対、3は本文にありません。
旅に出るとき、私は半日ほど、何の予定も入れない時間をつくることにしている。以前は、見たい場所を分刻みで回る旅をしていた。だが、帰ってから思い出すのは、名所よりも、道に迷って入った食堂の主人との会話や、雨宿りの間に眺めた町の様子だったりする。予定どおりに動いている間、人は次の目的地のことばかり考えていて、目の前のものを案外見ていない。何をするか決めずに、その場で出会ったものに身を任せる時間。私はそれを旅の「余白」と呼んでいるが、旅の記憶はむしろその中にこそ残るのだと思う。
49筆者が「余白」と呼んでいるものは何か。
- 1名所を効率よく回るために、あらかじめ空けておく時間
- 2予定を決めずに、目の前のものに向き合える時間
- 3道に迷ったときのために、予定に足しておく時間
- 4旅から帰った後で、旅の思い出を振り返る時間
答えと解説
答え: 2 予定を決めずに、目の前のものに向き合える時間
「何をするか決めずに、その場で出会ったものに身を任せる時間」を筆者は「余白」と呼んでいます。予定どおりに動くと「目の前のものを案外見ていない」とあり、余白はその反対の時間です。1と3は予定のための時間、4は旅の後の時間なので違います。
問題9 内容理解(中文)
次の文章を読んで、後の問いに対する答えとして最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
入社して五年目に、初めて新人の指導を任された。張り切った私は、仕事の手順を一から十まで丁寧に教えた。つまずきそうな所は先回りして注意し、資料も見本を渡してそのとおりに作らせた。新人はミスもなく仕事をこなし、周囲からも評価され、私は自分の指導に満足していた。
ところが、半年ほどたったある日、見本のない仕事を頼んだところ、彼は何から手をつければよいのかわからず、手が止まってしまった。そのとき初めて、私は自分が何を奪っていたのかに気づいた。迷ったり失敗したりしながら、自分で道筋を考える機会である。
それからは、教え方を変えた。仕事の目的と締め切りだけを伝え、進め方は本人に考えさせる。質問されても、すぐには答えを言わず、「あなたならどうする?」と聞き返す。もちろん時間はかかるし、見ていてもどかしいことも多い。失敗して、こちらが後始末に回ることもある。
それでも、自分で考えて出した答えは、たとえ不完全でも本人の中に残る。そして、次に似た仕事が来たとき、彼は前よりも少し早く動き出せるようになっている。教える側に必要なのは、すべてを教える力よりも、教えずに待つ忍耐なのかもしれない。
50「そのとき初めて、私は自分が何を奪っていたのかに気づいた」とあるが、何を奪っていたのか。
- 1先輩に質問して、仕事を早く覚える機会
- 2ミスのない仕事をして、評価される機会
- 3見本を参考にして、資料を作る機会
- 4迷いながら、自分で進め方を考える機会
答えと解説
答え: 4 迷いながら、自分で進め方を考える機会
下線部のすぐ後に「迷ったり失敗したりしながら、自分で道筋を考える機会である」とあります。手順を全部教え、見本どおりに作らせたため、新人が自分で考える機会がなかったのです。3の見本は筆者が与えていたもので、奪ったものではありません。
51筆者が教え方を変えたのはなぜか。
- 1手順を細かく教えても、新人がミスを繰り返したから
- 2手順どおりには働けても、見本がないと新人が動けなかったから
- 3新人に質問されても、筆者がすぐに答えられなかったから
- 4丁寧に教えすぎて、筆者自身の仕事が遅れたから
答えと解説
答え: 2 手順どおりには働けても、見本がないと新人が動けなかったから
新人は「ミスもなく仕事をこなし」ていましたが、見本のない仕事では「何から手をつければよいのかわからず、手が止まってしまった」ことがきっかけです。1は「ミスもなく」と合いません。3と4は本文に書かれていません。
52新人の指導について、筆者はどのように考えているか。
- 1失敗させないように、つまずきやすい所を先に教えておくべきだ。
- 2時間がかかるので、仕事の目的だけを伝えるのがよい。
- 3すぐに答えを教えず、本人が考えるのを待つことが大切だ。
- 4不完全な答えは身につかないので、最後は正解を教えるべきだ。
答えと解説
答え: 3 すぐに答えを教えず、本人が考えるのを待つことが大切だ。
最後の段落に「教える側に必要なのは、すべてを教える力よりも、教えずに待つ忍耐なのかもしれない」とあります。1は筆者がやめた教え方です。2は「時間がかかるので」という理由が本文と合いません。4は「たとえ不完全でも本人の中に残る」と反対です。
夏の強い日差しの下、街路樹の陰に入るとほっとする。街路樹には、日陰をつくって路面の温度が上がるのを抑えるほか、車の騒音をやわらげたり、空気中のほこりを吸着したりする働きがある。さらに、季節ごとに表情を変える緑は、無機質になりがちな都市の景観に潤いを与えてくれる。
しかし、街路樹の管理は決して簡単ではない。木は年々大きくなるが、都市の道路にはその成長を受け止める余裕がない。根が伸びれば歩道の舗装を持ち上げ、枝が茂れば信号や標識を隠してしまう。秋には大量の落ち葉が出て、住民から苦情が寄せられることもある。そのため、多くの自治体では枝を大きく切り落とす強い剪定を繰り返しているが、これでは木が弱り、本来の日陰もつくれない。費用をかけて維持しているのに、効果が上がらないのである。
大切なのは、植えた後の管理だけでなく、植える段階から、その場所の広さに合った種類の木を選ぶことだろう。大きく育つ木を狭い歩道に植えれば、いずれ無理な剪定は避けられなくなる。また、落ち葉の掃除などに住民が参加する仕組みをつくれば、街路樹を迷惑なものではなく、地域の財産として受け止める人も増えるのではないだろうか。
53本文で述べられている街路樹の働きに合うものはどれか。
- 1日差しをさえぎり、路面の温度が上がるのを抑える。
- 2根を広く伸ばし、歩道の舗装を安定させる。
- 3枝を茂らせ、信号や標識を見やすくする。
- 4季節を問わず、同じ緑で町の景観を保つ。
答えと解説
答え: 1 日差しをさえぎり、路面の温度が上がるのを抑える。
第1段落に「日陰をつくって路面の温度が上がるのを抑える」とあります。2と3は、第2段落の「舗装を持ち上げ」「標識を隠してしまう」と反対です。4は「季節ごとに表情を変える緑」と合いません。
54筆者によると、街路樹の管理が難しいのはなぜか。
- 1木の種類が多く、それぞれ手入れの方法が異なるから
- 2落ち葉の掃除に住民が参加せず、費用が増え続けているから
- 3木は大きく育つのに、都市の道路にはそれを受け止める余裕がないから
- 4強く剪定しないと、木がすぐに弱ってしまうから
答えと解説
答え: 3 木は大きく育つのに、都市の道路にはそれを受け止める余裕がないから
第2段落に「木は年々大きくなるが、都市の道路にはその成長を受け止める余裕がない」とあり、その結果、根や枝や落ち葉の問題が起きます。4は「強い剪定」で木が弱るという本文と反対です。1と2は本文に書かれていません。
55筆者の提案に合うものはどれか。
- 1費用を抑えるため、街路樹の数を減らすべきだ。
- 2植える場所の広さを考えて、木の種類を選ぶべきだ。
- 3木が弱らないよう、剪定をやめるべきだ。
- 4苦情が出ないよう、葉の少ない木を植えるべきだ。
答えと解説
答え: 2 植える場所の広さを考えて、木の種類を選ぶべきだ。
第3段落に「植える段階から、その場所の広さに合った種類の木を選ぶことだろう」とあります。数を減らす、剪定をやめる、葉の少ない木を植える、という提案は本文にありません。
近所の銭湯に通い始めて三年になる。最初は広い湯船が目当てだったが、今では、そこで顔を合わせる人たちに会うのも楽しみの一つだ。
といっても、彼らの名前も仕事も、私は何一つ知らない。毎週木曜の夕方に必ずいる白髪の男性、いつも同じ洗い場を使う若い人。交わすのは「今日は冷えますね」「お先に」といった短い言葉だけである。それ以上踏み込もうとは思わないし、向こうもそうだろう。
先日、しばらく姿を見なかった白髪の男性が久しぶりに現れた。「お元気でしたか」と声をかけると、「ちょっと旅行に行っていましてね」と笑った。それだけのやり取りなのに、私は自分でも意外なほどほっとした。名前も知らない相手の不在を、私はどこかで気にかけていたらしい。
職場や家族との関係は、濃い分だけ気をつかうことも多い。それに比べ、銭湯での関係は、互いの事情に立ち入らないからこそ気楽で、しかも、会えば無事を確かめ合うくらいのつながりはある。都市では近所付き合いが薄れたとよく言われる。だが、人と人とのつながりは、深いか浅いかの二つに一つではない。こうした緩やかなつながりが日常のあちこちにあることが、暮らしの安心を支えているのではないかと思う。
56「私は自分でも意外なほどほっとした」とあるが、なぜか。
- 1男性が旅行の話をしてくれて、親しくなれたと感じたから
- 2男性に声をかけるのは初めてで、緊張していたから
- 3男性の名前をやっと知ることができたから
- 4気づかないうちに、姿を見せない男性のことを心配していたから
答えと解説
答え: 4 気づかないうちに、姿を見せない男性のことを心配していたから
下線部の後に「名前も知らない相手の不在を、私はどこかで気にかけていたらしい」とあります。自分では意識していなかった心配が消えたので、意外なほどほっとしたのです。名前を知った、親しくなった、という内容は本文にありません。
57筆者によると、銭湯での人間関係にはどのような特徴があるか。
- 1事情には立ち入らないが、互いの無事を確かめ合う程度のつながりはある。
- 2名前も仕事も知らないので、相手が来なくなっても気にならない。
- 3毎週同じ時間に会うので、職場の人間関係よりも深いつながりになる。
- 4短い言葉しか交わさないため、かえって気をつかうことが多い。
答えと解説
答え: 1 事情には立ち入らないが、互いの無事を確かめ合う程度のつながりはある。
最後の段落に「互いの事情に立ち入らないからこそ気楽で、しかも、会えば無事を確かめ合うくらいのつながりはある」とあります。2は男性の不在を気にかけていたことと合いません。3は「深い」、4は「気をつかう」が本文と反対です。
58筆者の考えに合うものはどれか。
- 1都市の暮らしでは、近所との深い付き合いを取り戻すべきだ。
- 2気楽な関係を保つには、相手と言葉を交わさないほうがよい。
- 3深くはない緩やかなつながりも、暮らしの安心を支えている。
- 4職場や家族との関係は、銭湯での関係ほど大切ではない。
答えと解説
答え: 3 深くはない緩やかなつながりも、暮らしの安心を支えている。
最後の文に「こうした緩やかなつながりが日常のあちこちにあることが、暮らしの安心を支えているのではないか」とあります。筆者は深い付き合いを取り戻せとは言っていません。2は短い言葉を交わしている事実と合わず、4のような比べ方もしていません。
問題10 内容理解(長文)
次の文章を読んで、後の問いに対する答えとして最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
料理の世界に入って二十年あまりになる。十八歳で弟子入りした店で、最初の一年間に私がしたことといえば、ほとんど毎日、だしをとることと野菜を切ることだけだった。
当時の私は、それが不満でならなかった。早く客に出す料理を作りたかったし、新しい料理を考え出して周りを驚かせたいという気持ちも強かった。同じ作業を毎日繰り返すことに、どんな意味があるのかわからなかったのである。だしなど、手順さえ覚えれば誰がとっても同じだ。私は本気でそう思っていた。
ある朝、いつものようにだしをとっていると、師匠が鍋をのぞき込み、黙って味見をした。そして、「昨日と同じ味か」と聞いた。私は答えられなかった。昨日のだしの味など、気にもしていなかったからだ。師匠は言った。「昆布も鰹節も、毎日少しずつ違う。水の温度も、その日の気温で変わる。同じ手順で作っても、同じ味にはならない。同じ味にするために、毎日違うことをするんだ」。
その言葉の意味がわかったのは、ずいぶん後のことである。毎日同じ作業を繰り返していると、わずかな違いに気づけるようになる。今日の昆布は少し香りが弱い、今朝は水が冷たいから火にかける時間を少し延ばそう、といった具合だ。繰り返しとは、ただ同じことをなぞることではなかった。毎回の小さな違いを感じ取り、それに合わせて手を加えることだったのだ。決まった手順を決まったとおりにこなすだけなら、確かに誰にでもできる。しかし、材料やその日の条件に応じて、仕上がりを同じ水準に保つ力は、繰り返しの中でしか身につかない。
今、私の店にも若い料理人がいる。彼らを見ていると、昔の自分を思い出す。新しい料理に挑戦したいという意欲は頼もしいが、基本の作業にはすぐに飽きてしまうようだ。私は彼らに、師匠の言葉をそのまま伝えることはしない。言葉で説明されても、当時の私と同じように、わかったつもりになるだけだろうから。その代わり、ときどき「昨日と何が違った?」とだけ聞くようにしている。
新しい料理を生み出すことも、料理人の大切な仕事である。だが、それは土台があってこそだ。どれほど独創的な料理も、毎日の基本の作業に支えられている。客が「いつもの味だ」と安心して箸を進めてくれることの裏には、毎日の小さな工夫の積み重ねがある。基本を繰り返すことは、一人前になるまでの退屈な準備期間などではない。それ自体が料理人の仕事の中心なのだと、今は思っている。
59「私は本気でそう思っていた」とあるが、どのように思っていたのか。
- 1だしは、師匠のやり方をまねればおいしくなる。
- 2だしは、決まった手順で作れば誰でも同じ味になる。
- 3だしのとり方を覚えれば、すぐに客に料理を出せる。
- 4だしの味は、その日の気温によって変わるものだ。
答えと解説
答え: 2 だしは、決まった手順で作れば誰でも同じ味になる。
下線部の直前に「だしなど、手順さえ覚えれば誰がとっても同じだ」とあり、「そう」はこの内容を指します。4は後で師匠に教えられたことで、当時の筆者の考えではありません。1と3は本文に書かれていません。
60「同じ味にするために、毎日違うことをするんだ」とは、どういうことか。
- 1客を飽きさせないように、毎日少しずつ味を変える必要がある。
- 2毎日新しい材料を試すことで、だしの味を安定させられる。
- 3決まった手順を毎日繰り返せば、自然に同じ味になる。
- 4材料や条件の違いに合わせて、毎回作り方を調整する必要がある。
答えと解説
答え: 4 材料や条件の違いに合わせて、毎回作り方を調整する必要がある。
師匠は、昆布や鰹節、水の温度が毎日違うので「同じ手順で作っても、同じ味にはならない」と言っています。後の段落でも「毎回の小さな違いを感じ取り、それに合わせて手を加える」と説明されています。3は師匠の言葉と反対、1は味を変えるという点が違います。
61筆者が若い料理人に「昨日と何が違った?」と聞くのはなぜか。
- 1言葉で教えるより、自分で違いに気づかせたいから
- 2作業の手順を正しく覚えたか確かめたいから
- 3新しい料理を考えるきっかけを与えたいから
- 4師匠の言葉を思い出させたいから
答えと解説
答え: 1 言葉で教えるより、自分で違いに気づかせたいから
筆者は師匠の言葉をそのまま伝えないのは「言葉で説明されても、…わかったつもりになるだけだろうから」だと述べ、「その代わり」に質問しています。自分で小さな違いに気づかせるためです。4は、師匠の言葉を伝えていないので合いません。
62筆者が最も言いたいことは何か。
- 1料理人は、新しい料理を生み出すことより客を安心させることを優先すべきだ。
- 2若い料理人は、基本の作業に飽きないよう自分で工夫するべきだ。
- 3基本を繰り返すことは準備期間ではなく、料理人の仕事の中心である。
- 4師匠の教えは、言葉ではなく長い時間をかけて理解するものだ。
答えと解説
答え: 3 基本を繰り返すことは準備期間ではなく、料理人の仕事の中心である。
最後の段落で「基本を繰り返すことは、一人前になるまでの退屈な準備期間などではない。それ自体が料理人の仕事の中心なのだ」と結論を述べています。1は「新しい料理を生み出すことも、料理人の大切な仕事」とあり、どちらかを優先せよとは言っていません。2と4は文章全体の主張ではありません。
問題11 統合理解
次のAとBの文章を読んで、後の問いに対する答えとして最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
A
小学校の宿題に対しては、量が多すぎる、家庭の負担になるといった批判もある。しかし、宿題の一番の役割は、知識を増やすことよりも、毎日机に向かう習慣をつけることにあると考える。学年が上がれば、学ぶ内容は難しくなり、自分で計画を立てて勉強する力が求められる。その土台となるのが、小学生のうちに身につけた学習習慣だ。もちろん、子どもが嫌になるほどの量を出すのは逆効果である。宿題が負担だと感じる家庭が多いのなら、まず量や内容を見直せばよい。短い時間でも、決まった時間に毎日取り組めるような宿題を、学校が責任を持って出すべきだ。家庭任せにしていては、習慣がつく子とつかない子の差が広がるばかりだろう。
B
宿題をめぐっては、学習習慣を身につけさせるために必要だという意見が根強い。確かに、家で勉強する習慣は大切だ。だが、全員に同じ課題を一律に出すやり方では、得意な子には退屈で、苦手な子には重荷になる。同じ時間をかけても、得られるものは子どもによって大きく違うのだ。しかも、親に言われて嫌々こなすだけの宿題では、机に向かう習慣は身についても、学ぶ意欲までは育たないのではないか。宿題の量は減らし、何を調べるか、どれだけ取り組むかを子ども自身に選ばせる時間を増やしてはどうだろうか。自分で決めて取り組んだ経験こそが、主体的に学ぶ力につながるはずだ。学校は、その選び方を支える役に回ればよい。
63AとBのどちらにも書かれていることは何か。
- 1宿題は家庭の負担になるので、なくすべきだ。
- 2宿題は子どもの知識を増やすために欠かせない。
- 3宿題の内容は、子どもが自分で選ぶべきだ。
- 4家で勉強する習慣を身につけることは大切だ。
答えと解説
答え: 4 家で勉強する習慣を身につけることは大切だ。
Aは宿題の役割を「毎日机に向かう習慣をつけること」だとし、Bも「確かに、家で勉強する習慣は大切だ」と認めています。1はどちらの意見でもありません。2はAが「知識を増やすことよりも」と否定しています。3はBだけの意見です。
64宿題について、AとBはどのように考えているか。
- 1Aは宿題の量をもっと増やすべきだと考え、Bは宿題そのものをなくすべきだと考えている。
- 2Aは毎日取り組める宿題を学校が出すべきだと考え、Bは量を減らして子どもに選ばせるべきだと考えている。
- 3Aは宿題で知識を増やすことが大切だと考え、Bは宿題で学習習慣をつけることが大切だと考えている。
- 4Aは宿題の量を各家庭に任せるべきだと考え、Bは学校が全員に同じ量を出すべきだと考えている。
答えと解説
答え: 2 Aは毎日取り組める宿題を学校が出すべきだと考え、Bは量を減らして子どもに選ばせるべきだと考えている。
Aは「決まった時間に毎日取り組めるような宿題を、学校が責任を持って出すべきだ」、Bは「宿題の量は減らし、…子ども自身に選ばせる時間を増やしてはどうだろうか」と述べています。Aは量を増やせとは言っておらず、家庭任せにも反対しています。Bはなくせとは言っていません。
問題12 主張理解(長文)
次の文章を読んで、後の問いに対する答えとして最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
私たちの暮らしは、この数十年で驚くほど便利になった。ボタン一つで洗濯が終わり、温めるだけで食事ができ、地図を覚えなくても目的地に着ける。便利さとは、つまり手間が省けることである。省いた分の時間と労力を、人はより大切なことに使えるようになった。このこと自体を否定するつもりはない。しかし、手間を省くことで、私たちが気づかないうちに手放しているものもあるのではないか。
たとえば、道案内のアプリを使って初めての町を歩くと、目的地には迷わず着ける。だが、帰り道になると、来た道をほとんど覚えていないことに気づく。画面の矢印だけを追っていたため、町の景色が記憶に残っていないのだ。迷うという手間は、実は、周りをよく見て、自分の位置を確かめ、頭の中に地図を描いていく過程でもあった。手間が省かれると、その過程で得られていたものも一緒に失われてしまう。
料理にも同じことがいえる。出来上がった料理を温めるだけなら、失敗することはない。一方、材料を選び、切り、味を見ながら作れば、時間はかかるし失敗もする。しかし、その手間の中で、人は旬の野菜を知り、塩加減を覚え、食べる人の好みを思い浮かべる。手間とは、単に面倒な作業なのではなく、物事と深く関わるための入り口なのである。
では、便利さを捨てて、昔の暮らしに戻ればよいのか。そうではない。すべてに手間をかけていたら、一日はいくらあっても足りない。仕事や家事に追われる現代人にとって、便利さはやはり欠かせないものだ。問題は、便利さそのものにあるのではない。何の手間を省き、何の手間を残すかを、私たちが自分で選ばなくなっていることにある。
便利な道具やサービスは、次々と私たちの前に現れる。新しいものが出れば、深く考えずにそれを使う。そうしているうちに、手間は「省けるなら省くべきもの」としか見られなくなっていく。だが、省いてもかまわない手間もあれば、自分にとって手放したくない手間もあるはずだ。毎朝のコーヒーを自分の手で淹れる時間が一日の支えになっている人もいれば、子どもと一緒に料理をすることが何よりの楽しみだという人もいるだろう。何が大切な手間かは、人によって違う。
便利さは、人から手間を奪うと同時に、時間という余裕を与えてくれる。その余裕を何に使うのか。あえて手間をかけることに使ってもいいのである。大切なのは、便利さに流されるのではなく、自分にとってかける価値のある手間は何かを見極めることだ。手間をかけることを自ら選んだとき、便利さは初めて、本当の意味で私たちの暮らしを豊かにするのだと思う。
65「迷うという手間」について、筆者はどのように述べているか。
- 1時間の無駄なので、アプリを使って省くべきものだ。
- 2町の景色を楽しむための、旅の大切な目的だ。
- 3周りを見て自分の位置をつかみ、町を覚えていく過程でもある。
- 4初めての町では避けられないので、受け入れるしかない。
答えと解説
答え: 3 周りを見て自分の位置をつかみ、町を覚えていく過程でもある。
下線部の後に「周りをよく見て、自分の位置を確かめ、頭の中に地図を描いていく過程でもあった」とあります。筆者は迷うことを、町を覚える過程として評価しています。1は筆者の考えと反対です。2と4は本文に書かれていません。
66筆者が料理の例を挙げているのはなぜか。
- 1手間をかけることで、物事と深く関わることができると示すため
- 2失敗しないためには、便利な方法で作るほうがよいと示すため
- 3料理は道案内と違って、手間を省けない作業だと示すため
- 4手間をかけた料理のほうが、おいしくなることを示すため
答えと解説
答え: 1 手間をかけることで、物事と深く関わることができると示すため
料理の段落は「手間とは、単に面倒な作業なのではなく、物事と深く関わるための入り口なのである」でまとめられています。「同じことがいえる」とあるので、道案内と違うという3は誤りです。味がよくなるという話はしていません。
67「手間」について、筆者はどのように考えているか。
- 1面倒なものなので、できる限り省いたほうがよい。
- 2現代人は忙しいので、手間をかける余裕はない。
- 3どの手間が大切かは、誰にとっても同じである。
- 4省いてかまわない手間もあれば、手放したくない手間もある。
答えと解説
答え: 4 省いてかまわない手間もあれば、手放したくない手間もある。
第5段落に「省いてもかまわない手間もあれば、自分にとって手放したくない手間もあるはずだ」とあります。3は「何が大切な手間かは、人によって違う」と反対です。2は、便利さが「時間という余裕を与えてくれる」という最後の段落と合いません。
68筆者の主張に合うものはどれか。
- 1便利さを捨てて、手間をかけていた昔の暮らしに戻るべきだ。
- 2便利さに流されず、どの手間をかけるかを自分で選ぶべきだ。
- 3新しい道具やサービスが出たら、積極的に取り入れるべきだ。
- 4便利さによって生まれた時間は、仕事や家事に使うべきだ。
答えと解説
答え: 2 便利さに流されず、どの手間をかけるかを自分で選ぶべきだ。
最後の段落に「便利さに流されるのではなく、自分にとってかける価値のある手間は何かを見極めることだ」とあります。1は第4段落で「そうではない」と否定されています。3は「深く考えずにそれを使う」ことを問題にしている本文と合いません。
問題13 情報検索
次の案内を見て、後の問いに対する答えとして最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
若葉市民文化センター 施設利用のご案内
当センターの部屋は、どなたでもご利用いただけます。利用料金は次のとおりです。
| 部屋 | 定員 | 午前 9:00〜12:00 | 午後 13:00〜17:00 | 夜間 18:00〜21:00 |
|---|---|---|---|---|
| 会議室A | 12人 | 1,200円 | 1,600円 | 1,800円 |
| 会議室B | 30人 | 2,200円 | 2,800円 | 3,200円 |
| 和室 | 20人 | 1,800円 | 2,400円 | 2,700円 |
| 音楽室 | 15人 | 3,000円 | 4,000円 | 4,500円 |
| 多目的ホール | 80人 | 6,000円 | 8,000円 | 9,000円 |
- 料金は、1区分(午前・午後・夜間)あたりの金額です。
- 土曜・日曜・祝日にご利用の場合は、表の料金に1区分につき500円を加算します。
- 代表者が市外にお住まいの場合は、表の料金の1.5倍となります。
- 楽器の演奏は音楽室と多目的ホールでのみ可能です。
- 飲食は和室でのみ可能です。その他の部屋では、水分補給以外の飲食はご遠慮ください。
予約方法
- 利用日の3か月前の月の1日から、センター窓口または電話で受け付けます。
- 予約後7日以内に、窓口で利用料金をお支払いください。期限までにお支払いがない場合、予約は取り消しとなります。
- 定員を超えるご利用はできません。
取消料
お支払い後に予約を取り消す場合は、取り消す時期に応じて、次の取消料がかかります。取消料は、お支払いいただいた料金から差し引いて返金いたします。
- 利用日の15日前まで:無料
- 利用日の14日前から4日前まで:利用料金の30%
- 利用日の3日前から当日まで:利用料金の50%
※利用日の変更は、取消と新たな予約として扱います。
お問い合わせ:若葉市民文化センター 窓口(9:00〜21:00、月曜休館)
69市内に住むマリアさんは、来週の土曜日の午後、自分を含めて18人で勉強会を開きたい。楽器は使わない。部屋代は3,000円以内にしたい。マリアさんが利用できる部屋はどれか。
- 1和室
- 2会議室A
- 3会議室B
- 4多目的ホール
答えと解説
答え: 1 和室
18人が入れるのは会議室B・和室・多目的ホールです。土曜日なので500円が加算され、会議室Bは2,800円+500円=3,300円、和室は2,400円+500円=2,900円です。3,000円以内なのは和室だけです。会議室Aは定員12人なので使えません。
70市内に住む田中さんは、平日の夜間に音楽室を予約し、料金を支払った。その後、利用日の10日前に予約を取り消した。田中さんに返金される金額はいくらか。
- 11,350円
- 22,250円
- 33,150円
- 44,500円
答えと解説
答え: 3 3,150円
平日夜間の音楽室は4,500円です。10日前の取消は「14日前から4日前まで」に当たるので、取消料は30%の1,350円です。返金は4,500円−1,350円=3,150円です。1は取消料そのもの、2は50%で計算した場合です。
正答表
- 12
- 24
- 31
- 43
- 51
- 64
- 73
- 82
- 94
- 101
- 112
- 123
- 131
- 144
- 152
- 163
- 171
- 184
- 192
- 203
- 211
- 224
- 232
- 243
- 251
- 262
- 274
- 281
- 293
- 303
- 311
- 324
- 332
- 341
- 353
- 364
- 372
- 383
- 391
- 404
- 412
- 421
- 434
- 443
- 452
- 463
- 471
- 484
- 492
- 504
- 512
- 523
- 531
- 543
- 552
- 564
- 571
- 583
- 592
- 604
- 611
- 623
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- 674
- 682
- 691
- 703
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